水虫などのカビ(真菌)の一種でマラセチア酵母菌のことで、犬の皮膚に寄生する常在菌のことです。
乾燥を嫌うマラセチアは、通常、口周りや首、耳(耳介)、わきの下や下腹部、陰部周辺などに寄生しています。
皮膚表面に付着するフケやアカに含まれる皮脂分を栄養源として生きています。
普段は悪さをしないのですが、脂質や湿度が高い場所を好み、犬の抵抗力の低下、ストレス、栄養の偏り、体が清潔でないなどの原因で異常繁殖をしてしまった場合に痒みを生じ皮膚炎となります。
これがマラセチア感染症です。
原因とメカニズム
マラセチアは免疫力が高ければ特に問題はありませんが、例えばもともとアトピー性皮膚炎を抱えている犬は、皮膚のバリアが崩れているため、角質や表皮各層が傷つきやすく、表皮は早く修復させようと新陳代謝の速度(ターンオーバー)を速めます。
その結果、脂分が皮膚表面にどんどん押し出されて行き、皮脂分を栄養源とするマラセチアが繁殖しやすくなります。
その他の原因でターンオーバーが速くなり、表皮に皮脂分が急増して起こる皮膚炎は「脂漏性皮膚炎」といい、これもマラセチア感染症を誘発しやすくなります。
マラセチアの症状
犬の皮膚がベタベタと脂っぽく赤くなります。
独特な匂いや、フケ、脱毛、激しい痒みに襲われます。
耳の中で繁殖した場合は、こげ茶色、黒っぽく、独特なニオイのある、ネットリした耳アカが溜まります。
外耳炎の原因もマラセチア感染が多いと言われています。
マラセチアの予防について
①湿気対策
マラセチアはジメジメした環境を好みます。
梅雨の時期などは特に気をつけて、お部屋の湿度調整が必要になります。
シャンプー後はブラシを使って毛の根元からしっかりとドライヤーで乾かしてください。
耳の中も必ずチェックしてください。
②免疫力(皮膚のバリア力)を高める
正しく、定期的なシャンプーが必要です。
皮膚を正常な状態に保ってください。
普通の美容シャンプーでは効果がないので、必要な成分が入っている薬用のシャンプーを使ってください。
シャンプーの時は皮膚を十分に濡らし、爪を立てずに全身をマッサージするようなイメージで行ってください。
③ペットフードで対策
マラセチアは脂分を好むので、脂っぽい食事はなるべく控えるようにしましょう。
調理した人の食べ物なども止めましょう。
また食べ物にアレルギーがある場合、知らず知らずのうちに皮膚の状態を悪くしていることもあります。
マラセチアの治療について
マラセチアの異常繁殖を抑えるためには、抗真菌剤の投与が必要となります。
また、アトピー性皮膚炎など何らかの基礎疾患がマラセチア感染症の背景にある場合、その両方の治療が必要になります。
しかも、アトピーとマラセチアの治療法は異なるため、もし併発していてアトピーのみの治療を行っていた場合はマラセチアを悪化させてしまいます(なぜならアトピーの治療にはステロイドを使うことが多く、ステロイドは体の免疫力を低下させます。そしてこれはマラセチアを悪化させる)。
担当の獣医師と良く相談して適切な治療を行なって下さい。
まずは予防が大事ですので適切なシャンプーを使ってあげましょう。